なぜ、ダブルブレストなのか?

なぜ、
ダブルブレストなのか?

今回も少し長く、一部マニアックな内容です。

けれど、酷暑に負けないほどの情熱を込めて書きました。

スーツについて知りたい方、スーツが好きな方、ダブルのスーツやジャケットが気になる方。
そして、装うことをもっと楽しみたい方や、テーラー・ブレイズを応援してくださる方(笑)。

ぜひ最後までお読みください。

只今、テーラー・ブレイズでは『ダブルスーツ&ジャケットフェア』を開催しております。

このフェアを開催した理由は、とてもシンプルです。

『もっと多くの方に、ダブルを着ていただきたい!』

当店では比較的ダブルのご注文も多いのですが、それでも圧倒的に多いのはシングルスーツです。

けれど、ダブルスーツは、決まると本当に格好いい。

『シングルとダブル、どちらが好きですか?』と聞かれたら、私は迷わずダブルと答えます

もちろん、ボンドスーツのような端正なシングルも格好いいですし、私自身よく着ます。

それでも、一着だけ選べと言われたら、やはりダブルです。

エレガントで、華やかで、ときに艶っぽい。
ダブルのスーツは、私にとって『格好いいスーツの原点』であり、この仕事を始めることにもつながった特別な存在なのです。

今回は、そんな私のスーツの原点と、ダブルへの並々ならぬ思いについて書きたいと思います。

21歳で買った、最初のダブルスーツ

私が初めてダブルのスーツを買ったのは、21歳の頃でした。

きっかけは、雑誌で見たジョルジオ・アルマーニの広告写真です。
おそらく、当時読んでいた『ミスター・ハイファッション』だったと思います。

カメラマンはアルド・ファライ(Aldo Fallai)。ジョルジオ・アルマーニとの約30年にわたる協働で知られています。

その写真を見た瞬間、素直に思いました。

『うわあ、格好いい!』

「モードの帝王」と称され、現代のスーツスタイルを大きく変えたジョルジオ・アルマーニ氏

アルマーニという名前は知っていましたが、写真を見て、
『これがアルマーニか〜』
と、初めて腑に落ちたのを覚えています。

1990年代前半は、アルマーニの影響を受けたソフトスーツが街にあふれていた時代です。
かなり誇張されたシルエットや、カラフルなスーツも少なくありませんでした。

けれど、私が本家アルマーニに感じたものは、それらとは少し違いました。

身体を強く締めつけているようには見えない。
それなのに、きちんとスーツとして成立している。

かっちりとした服を、肩の力を抜いて着ているような佇まい。

その写真を見たとき、初めて自分の中に、
『自分は、こういうスーツを格好いいと思う』
という基準が生まれました。

そこから、私のダブルスーツをめぐる長い旅が始まります。

理由は分からなくても、惹かれるスーツがあった

その後、古い映画の中で、フレッド・アステアのスーツ姿に惹かれるようになりました。

フレッド・アステア
アメリカ合衆国ネブラスカ州オマハ生まれの俳優、ダンサー、歌手。
舞台から映画界へ転じ、1930年代から1950年代にかけてハリウッドのミュージカル映画全盛期を担った。

軽やかで柔らかく、動いても服が身体に自然についてくる。
きちんとしているのに、窮屈には見えない。

その姿が、とても格好よく見えました。

そして、ほぼ同じ時期にBBCのニュースで目にした皇太子時代のチャールズ英国王のダブルのスーツ姿にも、同じ魅力を感じました。

チャールズ3世 
イギリスのウィンザー朝第5代国王(在位: 2022年9月8日- )、その他14か国の英国連邦及び王室属領・海外領土の君主。
イングランド国教会の首長。全名はチャールズ・フィリップ・アーサー・ジョージ(Charles Philip Arthur George)。
画像は皇太子時代(90年代)のモノ

一人は映画や舞台で活躍したエンターテイナー。
もう一人は英国王室の人物です

時代も体型も立場も違う二人を、私は同じように格好いいと思ったのです。

後になって、二人がともに『アンダーソン&シェパード』でスーツを仕立てていたことを知りました。

先に『格好いい』という感覚があり、その理由をたどった先に『アンダーソン&シェパード』がありました。

自分が何度も自然に選び取っていたものに、後から名前がついたのです。

映画『ウォール街』でサー・ラリー・ワイルドマンを演じたテレンス・スタンプが着ていたグレンチェックのダブルのスーツや、1998年版映画アベンジャーズ』でジョン・スティード役のレイフ・ファインズが着ていたネイビーストライプのダブルの3ピースも、先に『格好いい』という感覚があり、後にアンダーソン&シェパードのスーツであることを知りました。

映画『ウォール街』でサー・ラリー・ワイルドマンを演じたテレンス・スタンプ
1998年版の映画アベンジャーズ』でジョン・スティード役のレイフ・ファインズ 下掛けのダブルがカッコいい!

そのほかにも大学生の時に映画館で見た『ゴッドファーザーpart3』で主人公マイケルの横に立つ弁護士役のジョージ・ハミルトン、その着こなしも長年気になっていました。

『ゴッドファーザーpart3』での1シーン
ファミリーの弁護士、B.J. ハリソンを演じたジョージ・ハミルトン
ラウンドピンホールカラーにダブルのスーツが似合いすぎです!

周囲とは違うのに浮いておらず、端正でありながら硬すぎない。品があり、服を着慣れていることが自然に伝わってきます。

プリンス・オブ・ウェールズ(赤いオーバーペーンの入ったグレンチェック)のダブルを着るジョージ・ハミルトン
写真集『A STYLE IS BORN』より  撮影場所は『プラザ・アテネ・ニューヨーク』
ちなみに、この『プラザ・アテネ・ニューヨーク』のメインダイニングでスーシェフを務めた加藤さんが営む、福岡市、渡辺通の「フレンチバルKATO」は、私もよく訪れるお気に入りのお店です。
加藤さん曰く『プラザ・アテネ・ニューヨーク』のバックヤードにはエリザベス・テイラーからの感謝状が飾ってあったとのこと。
ということは、エリザベス・テイラーと浮き名を流したジョージ・ハミルトンは、もしかすると加藤さんの料理を食べたことがあるのでは?と勝手な妄想をすると楽しくなるのは私だけ???

ずっと後になって、彼が『アンダーソン&シェパード』の長年の顧客だったことを知りました。
劇中のスーツが同店のものだったかは確認できませんでしたが、彼の中に培われた仕立てや着こなしの感覚が、映画の中にも表れていたのかもしれないと思うと腑に落ちます。

一度なら、偶然かもしれません。
しかし、何度も重なることで、自分が何に惹かれてきたのかが少しずつ分かってきました。

私が格好いいと思うダブルスーツ

画像は、私が趣味で集めている古着のアンダーソン&シェパードのダブルのジャケットです。
このジャケットの注文主は、写真集『A STYLE IS BORN』にも載っているエドワード・E・エルソン氏。
アンダーソン&シェパードの古着(ヴィンテージスーツ)は1960年代〜2010年代まで各年代ダブル、シングル合わせてまあまあな数あります(笑)ので別の機会にご紹介したいと思います。
各年代のスーツやジャケットを並べてみるとその年代の流行はありますが、確実に共通しているスタイルが見えくるので楽しいですよ⇦変態だ〜😊

アンダーソン&シェパードの魅力は、柔らかさと品格が両立していることです。

自然な肩、豊かな胸元のドレープ、身体の動きについてくる軽やかさ。

威厳はあるけれど、威圧的ではない。
ゆとりはあるけれど、だらしなくはない。

服の形を強く押し出すのではなく、着る人自身の佇まいを美しく見せる。

一般的には、そのような言葉で語られます。

しかし、私に言わせれば、

『格好いいから、格好いい』

としか説明できないのが本音です(笑)。

それでいいと思っています。

本当に美しいものや、本当に美味しいものに出会ったとき、その理由を細かく説明できないことがあります。

理屈より先に、心が動く。

私にとって、アンダーソン&シェパードのスーツは、そういう存在でした。

もちろん、格好いいスーツの形は一つではありません。

英国ビスポークテーラーを代表するハンツマンのように、肩を構築的につくり、ウエストを引き締めた、力強く堂々としたスーツもあります。

ハンツマンのシグネチャースタイル『シングルブレステッドの1ボタンジャケット』

ハンツマンとアンダーソン&シェパードは、対照的なスタイルとして語られることの多いテーラーです。

かくいう私も、24歳のときに初めて注文したビスポークスーツは、ハンツマン出身の方にお願いしました。
最初でしたから成功とは言えない体験でしたが・・・

そのときのことも、いつか私のスーツ遍歴として、記憶をたどりながら書いてみたいと思っています。

どちらのスタイルが優れているという話ではありません。

どのような姿を格好いいと感じるか?
その違いです。

私は柔らかく自然なスーツが好きですが、お客様が構築的で力強いダブルを望まれるのであれば、その方向性を踏まえ、お似合いになる形でおつくりします。

大切なのは、その方がどのような自分に見せたいのか、何を格好いいと感じるのかを理解することだと思っています。

好きなダブルスーツの源流をたどると

アンダーソン&シェパードのスタイルをたどると、フレデリック・ショルテとウィンザー公へとつながります。

ウィンザー公爵:Duke of Windsor(1894年 – 1972年)元英国王エドワード8世

ウィンザー公は、決して大柄な人物ではありませんでした。

しかし、服の着方やボタンの留め方、全体のバランスを工夫し、自分ならではのスタイルをつくりました。

格式ある服を、そのまま堅く着るのではない。
自分の身体と感覚に合わせ、柔らかく、洒落たものとして着る。

ウィンザー公が好んだショルテのドレープカットを、ショルテのもとで学んだパー・アンダーソンが受け継ぎ、シドニー・ホレイショ・シェパードと共に『アンダーソン&シェパード』を開きました。

そして、私が最初に惹かれたアルマーニも、伝統的な男性用スーツから過度な硬さを取り除き、柔らかく軽やかに再構築しました。

もちろん、それぞれのスーツは同じものではありません。

けれど私には、そこに

『男らしいつくりのスーツの中に、柔らかさがある!』

という、共通した感覚があるように思えます。

21歳の頃、私はそんな歴史もつながりも知らず、アルマーニの広告を見て『格好いい』と思いました。

その後、チャールズ皇太子や映画俳優たちの着こなしをたどり、アンダーソン&シェパードを知り、さらにショルテやウィンザー公へと遡っていきました。

自分が惹かれてきたものは、ばらばらの好みではなかったのです。

アンダーソン&シェパードのコピーをつくるわけではありません

ここまで読むと、私がアンダーソン&シェパードを推しまくっているように見えるかもしれません。

しかし、今回ご提案するのは、アンダーソン&シェパードを再現したスーツではありません。

テーラー・ブレイズのオリジナルパターンとバランスで、お客様一人ひとりに合わせて仕立てるダブルスーツです。

ただ、私が『格好いいと思うスーツ』の基準が形成されていく過程に、アンダーソン&シェパードの存在があったことは間違いありません。

そのうえで私は、これまで何着ものダブルスーツをつくり、試行錯誤を重ねてきました。

仕上がりに喜び、ときには悔しがり、そのたびに考え、修正してきました。

だからこそ、
『これなら、お客様に満足していただける!』
という確信を持って、今回のフェアを企画しています。

ラペルの幅、ボタンの位置、着丈、肩や胸のつくり、ウエストの絞り方、前身頃の重なり。
ダブルスーツは、一つひとつのバランスによって、見え方が大きく変わります。

それらを、お客様の体型や雰囲気、着る場面に合わせて調整する。
私の中にある『格好いい』を、今できる形で詰め込んだダブルスーツです。

「ダブルのスーツやジャケットは似合わない」と思っている方へ

ダブルのスーツやジャケットには
『身体の大きな人が着る服』
『重厚で威圧感がある』
『年齢を重ねた人の服』
という印象があるかもしれません。

けれど、ダブルスーツに一つの形しかないわけではありません。

柔らかくも、力強くもできる。
端正にも、軽やかにもできる。
華やかにも、控えめにもできます。

小柄な方には、ボタン位置や着丈を調整し、縦の流れをつくる。

細身の方には、胸まわりに適度なゆとりを持たせる。

大柄な方には、ラペルや前身頃のバランスを整え、重く見えすぎないようにする。

若い方には、生地やディテールを工夫し、古く見えない軽やかな一着にする。

身長や体型だけで、似合うかどうかが決まるわけではありません。

『ダブルは自分には似合わない』

と思っている方は、まだ自分に合う、格好いいダブルを知らないだけかもしれません。

そこは、私に任せてください!

※ダブルのジャケットのボタンの留め方について書いた過去ブログです。
着こなしのヒントになると思いますのでぜひこちらもご覧ください。

           ⇩
ダブルスーツのボタンはどう留める?正解はある?着こなしの基本を解説

ダブルスーツで、あなたの格好よさを見つける

私は、最初から仕立てる側の人間だったわけではありません。

映画や雑誌のスーツ姿に憧れ、

『自分も、こんなふうに着てみたい』

と思って店へ足を運んでいた、一人の客でした。

服が好きで、この仕事を始めました。

たくさんのスーツやジャケットを着てきたからこそ、ダブルが決まったときの格好よさを知っています。

ですから、

『いやあ、ダブルはちょっと……』
と思っている方にこそ、一度任せていただきたいのです。

私が好きなダブルを、あなたにも着せたいのではありません。

ダブルという服を使って、あなたにとっての格好よさを、一緒に見つけたいのです。

お客様の身体、職業、雰囲気、好みに合わせて、格好よく見える形を一緒に探します。

本気で格好よくします。

私のように、格好いいダブルを求めて長い旅に出たり、何度も一喜一憂したりする必要はありません。

私が重ねてきた試行錯誤と研究の成果を、最短距離でお客様の一着に還元します。

いわば、ダブル選びの「超時短」です(笑)。

すでにダブルが好きな方には、もっと深く楽しんでいただきたい。

これまで選択肢から外していた方には、
「こんなダブルもあるのか」
「これなら、自分も着てみたい」
と思っていただきたいです。

鏡の前に立ったとき、
『これは自分らしい』
『今までとは違うけれど格好いい』        
と思える一着をつくることが目的です。

これまで自分には似合わないと思っていた方も、少し気になりながら選ぶ勇気がなかった方も、一度、ダブルを選択肢に入れてみてください。

あなたに合うダブルのスーツやジャケットを、一緒につくりませんか?

ダブルスーツ&ジャケットフェアについて

今回のフェアでは、ダブルのスーツやジャケットをさらに格好よくするために、
『これがあったら、もっといい!』
私が考えた仕様やオプションを、店主の熱量ごと、すべて無料でお付けします。
※無料オプションの詳細はこちら

かなりお得なフェアです。
ダブルをすでにお持ちの方も、初めて挑戦する方も、ぜひこの機会にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人

テーラー・ブレイズ